カクテルパーティー効果 / デジタルアンプ

アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ vol.16
音響と技術 メールマガジン
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音響技術とソフトウェア、ハードウェア開発

音響と開発 : Sound & Development
株式会社エーアールアイ / ARI
ARI CO.,LTD.
アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ

カクテルパーティー効果 / デジタルアンプ

16

メールマガジン「アメニティ サウンド 音と快適の空間へ」は、現在、休刊中です。 バックナンバーのコラムの内、サウンドコラムと技術開発コラムは、 サウンド、技術開発コラム に再編集、一部加筆修正して掲載していますので併せてご利用ください。

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■ アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ【Vol.16】2002年10月17日
□    カクテルパーティー効果 / デジタルアンプ
□    http://www.ari-web.com/
□■□□□□□□□□□□□□ 株式会社エー・アール・アイ □■□■

□はじめての方へ、
このメールマガジンのご登録をいただきましてありがとうございます。
「アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ」は、隔週(第1、第3木曜日)
にお届けしています。内容を充実できるようにがんばりますので、末永く
お付き合いいただけますようお願い申し上げます。

 ■□■□■ CONTENTS Vol.16 □□□□□□□□□□□□□□□□□

  1.開発ツールの話(10)
    組込CPUのメモリアクセス(2)
  2.サウンド(16)
    人間の耳−最も優れた音のセンサー
  3.3GPP音声通信(10)
    騒音除去性能測定
    Ambient noise rejection / noise sensitivity
  4.デジタルアンプのコンシューマ化(URLクリッピング)

………………………………………………………………………………………
■1.開発ツールの話(10)組込CPUのメモリアクセス(2)
………………………………………………………………………………………
 前回は、組込系CPU,DSPなどのメモリアクセスについて簡単にご紹介
 しました。
 
 ご紹介したような特殊なメモリアクセスが関係するコードはコンパイラ
 を利用せず、アセンブラで実装する場合には、何ら問題が生じませんが、
 プロジェクトの方針(コードの保守、流用のためなどの理由によって)
 で、スタートアップなどを除いて基本的にコンパイラで作成すると決定
 している場合や、アセンブラとのミックスモデルで実装していても、高
 級言語のソースで頻繁にアクセスする必要があるI/Oポート等が存在す
 るとコンパイラの出力コードで動作させる必要が生じます。

  ▼前回までの内容は、バックナンバーをご覧ください。
  http://www.ari-web.com/mm/index.htm
 
    ……… ミックスモデル、I/Oポート ……………………
     □ミックスモデル

     異なる種類の複数の高級言語で作成されるプログラムの
     開発方式の1呼称です。

     パソコンのプログラム開発などで以前はアセンブラ+
     C言語、FORTRAN+C言語、C言語+VBなど複数の開発言
     語で作成される場合にミックスモデルと呼ばれていまし
     た(あまり聞かなくなったように思いますが、今でもミ
     ックスモデルと呼ばれるかも知れません)。
 
     □I/Oポート(I/O PORT)

     I/Oポートは、入出力の一般呼称のように見えますが、
     特別な注記が無い場合には、パラレルポートという信号
     線の端子の論理(1か0か)を制御したり、端子に接続
     されているハードウェア出力を読み取るための仕組みを
     指します。

     I/Oポートによる制御は、ディジタル2値の数値による
     制御の最も単純な方式ですが、ハードウェアが高機能に
     なると、機能1つ1つを信号線にして接続していたので
     は、配線がすさまじい本数になりますから、限られた用
     途の制御に用いられるのが一般的です。
    ………………………………………………………………………

 特殊なメモリアクセス方式は、コンピュータやCPUの本質的なもの
 ではなく、コンピュータの創生期やマイクロプロセッサの創生期に、
 ハードウェアとソフトウェアの性能バランスを工夫してプログラムに
 よって制御する製品などを実現するために考え出されたものが主です。
 
 一方、コンパイラは、数式に近い形でプログラムを作成する目的など
 で発展してきました。現在ではマイクロプロセッサの能力も高速、高
 機能化されてきていますから、高級言語を組み込み用途で利用するこ
 ともあたりまえになりました(製品の高機能化によって、高級言語で
 開発する必要性が高くなったためでもあります)。
 
 前置きが2回に渡って長くなりましたが、特殊メモリのアクセスは
 コンパイラのコードを確認しないと正常動作しないコードが生成され
 る場合がありますので注意が必要です。

 次回は、メモリアクセスのコードの注意について、元に戻って具体的
 なお話をしてみたいと思います。それでは、次回もよろしくお付き合
 いください(^^)。

  ▼ARIは、デジタル機器のハードウェア、ファームウェアの開発を
   お手伝いしています。
   http://www.ari-web.com/develop/index.htm

………………………………………………………………………………………
■2.サウンド(16)  人間の耳−最も優れた音のセンサー
………………………………………………………………………………………
 このコラムは、音や音響についての話題をお届けしています。

  ▼前回までの内容は、バックナンバーをご覧ください
   http://www.ari-web.com/mm/index.htm
 
 音の専門の方でなくても、音を測るセンサーがマイクロホンである
 ということは皆さんご存知だと思います(正確にはトランスデュー
 サー、変換器ですが...大目に見てください)。

 かつては、放送を必要とする特定の職業の方以外はそれほどマイク
 に接する機会がなかったのでしょうが、現代では、電話機のマイク
 やカラオケなどの普及によって多くの人が日常的にマイクに接する
 ようになりました。

 携帯電話とカラオケのマイクが大きく異なるように、一口にマイク
 ロホンといっても、用途によって様々な種類があり、中には小さな
 先端部分だけで10万円以上もする精密測定用のものもあります。

 そして、どんなに高価なマイクロホンよりも優れたセンサーである
 のが、私たち人間の耳なのです。
  
    …… 精密測定用マイクロホン …………………………………
     音を電気信号に変換するのがマイクロホンですが、その変
     換方式には幾つかの種類があり、プロ用としは主にダイナ
     ミック型とコンデンサ型の2種類が使われています。

     精密測定用はコンデンサ型のマイクロホンが主体で、かつ
     ては口径1インチのものが代表的でした。現在では可聴帯
     域を広くカバーしている1/2インチタイプが主に使われ
     ており、他に、高音域用の1/4インチ、1/8インチタ
     イプや、狭い空間に挿入できるプローブマイク、音源探査
     などが行えるインテンシティマイクというものがあります。

     それぞれをご紹介すると長くなりますので、またの機会
     に...(^^)
    ………………………………………………………………………

 この世の中にあるどんなマイクロホンよりも高性能であるといわれ
 ている人間の耳は、ジェット機やレーシングカーのような爆音から
 微かな物音まで、大小広範囲の音を聞き取ることができます。

 さらに、意識を集中して狙いを定めることで、周囲の騒音がいくら
 うるさくても、自分が聞きたい音だけを聞き分けることさえもでき
 ます(これをカクテルパーティー効果といいます)。

    …… カクテルパーティー効果 ………………………………
     複数の重なり合った音源の中から、特定の音源だけを選択
     的に抽出して聞くことができる、人間の聴覚の働きのこと。
     話し声や音楽などが混じりあったパーティー会場の喧騒の
     中であっても、会話の相手の声を聞き取れることから名付
     けられています。

     ▼日本音響学会のホームページにある
      「音のなんでもコーナー」でも、音に関するちょっとし
      た話題を扱っています。
     http://wwwsoc.nii.ac.jp/asj/index.html

    ………………………………………………………………………

 また、反対に聞きたくない音を排除することもできるので、騒音の
 中で眠ることも可能です(それでいて眠っている時でも、音で目が
 さめるようになっているという大変よくできた仕組みです)。

 これと同じことを装置を使ってやろうとしても、マイクロホン自体
 には同様のマスキング機能を持たないため、一定方向からの音にだ
 け反応する「(超)指向性マイク」を使うか、フィルターをかけて
 余分な成分を除去しなければなりません。

 それでも、人間の耳と同様の働きはなかなか実現できないのです。

 それでは、次回もよろしくお付き合いください。(^^)
 
………………………………………………………………………………………
■3.3GPP音声通信(10) 騒音除去性能測定
   Ambient noise rejection / noise sensitivity
………………………………………………………………………………………
 前回は受話歪測定のお話ををさせていただきました。今回は音声通信
 の第10回、騒音除去性能測定です。

  ▼前回までの内容はホームページのバックナンバーをご覧ください。
  http://www.ari-web.com/mm/

 ■7.騒音除去性能(騒音感度)
    Ambient noise rejection/noise sensitivity
  8.騒音除去性能(送話感度)
    Ambient noise rejection/sending sensitivity

 携帯電話での通話環境は、屋外、屋内を問わず周囲にさまざまな騒
 音があることがほとんどです。通話相手に周囲騒音ばかりが伝わり、
 肝心な話者の声が聞こえなくてはなりませんから、携帯端末にはあ
 る程度の騒音を除去する機能が必要となってきます。

 特に、携帯電話の場合は、音声コーデックによって符号化されます
 ので、雑音などの混入によって人声を基準に考えられた音声コーデ
 ックの音質、性能を左右するような影響を与える場合があります。
 (周囲が喧騒な場所から携帯電話から通話された時に音声がデタラ
 メに聞こえある場合がありますよね。)
 
 騒音除去性能(Ambient noise rejection)とは、周囲騒音に対して
 話者の話す声がどの程度の感度で送信できるかを評価する測定です。

 3GPP規格では、騒音除去性能はANR(Ambient noise rejection)
 値という測定評価規格が定められ、評価値として用いられます。

 ANR値は、「騒音感度」「送話感度」の2つの測定を行い、測定
 結果の差を算出します。「送話感度」が「騒音感度」より大きい程、
 ANR値は高くなり、より騒音に強いという数値評価になります。
 (騒音除去性能が高い)

 騒音除去性能は、騒音出力用のスピーカを比較的残響の多い部屋に
 設置して測定します。残響室を使用する理由は、騒音出力用スピー
 カから放射した試験信号の指向性を、反射音を利用することで、無
 くすためです。周囲のあらゆる方向から到来する騒音に対しての性
 能を評価する必要がありますが、残響室は、音源を増やさずに多数
 の入射音を擬似的に作り出すことができるため、残響室を利用しま
 す。

 □「騒音感度」測定
 騒音感度測定では室内に設置した騒音出力用スピーカから試験信号
 を出力し、ダミーヘッドの口元ににセットしたマイクロホン(MR
 P)で測定した周波数分布と端末より送信した音声を測定した周波
 数分布の比より求めます。

 試験信号には周囲騒音としてピンクノイズを使用します。

 □「送話感度」測定
 送話感度測定は基本的には以前お話した送話感度周波数特性と測定
 方法は同じです。

 ダミーヘッドの人工口から試験信号を出力し、ダミーヘッドの口元
 にセットしたマイクロホン(MRP)で測定した周波数分布と端末
 より送信した音声を測定した周波数分布の比より求めます。

 試験信号には話者の声としてSpeech Like Test Signal(人工音声)
 を使用します。

 3GPP規格ではANR値は0dB以上(+3dB以上推奨)と規
 定されています。「送話感度」は「騒音感度」以上、という事です。

  ▼送話感度周波数特性についてはバックナンバーをご覧ください。
  http://www.ari-web.com/mm/bn/20020815.htm
 
 エー・アール・アイは3GPP(+GSM,PDC)音響測定に対応し
 た「3G携帯通信開発用音響測定システム MTA−01WB−S」
 を開発・発売しています。

  ▼製品情報 MTA-01WB-S(3G、GSM、PDC対応)
  http://www.ari-web.com/mobile/3g/mta01-wbs/info-3gpp.htm
  ▼MTA−01WB(従来機能3G対応)製品情報
  http://www.ari-web.com/mobile/index.htm

………………………………………………………………………………………
■4.デジタルアンプのコンシューマ化(URLクリッピング)
………………………………………………………………………………………
 WEB参照可能な掲載記事などから毎日伝えられるニュースや記事から
 気になる情報や、翌日には埋もれてしまいそうな記事をピックアップ
 してご紹介しています(このメールマガジンの発行周期が隔週という
 こともあって新しい記事ばかりではありません)。

 今年は、デジタルアンプ、デジタルスピーカがコンシューマー価格帯
 の製品などで続々と採用されはじめた感があります。

 ▼デジタルアンプ「DEUS」搭載のMDシステム2機種
  日本ビクター2002年10月15日 報道発表
 http://www.jvc-victor.co.jp/products/compo/SS-NT1MD.html
 ▼高音質デジタルアンプ「DEUS」を開発
  日本ビクター2002年10月15日 報道発表
 http://www.jvc-victor.co.jp/products/others/DEUS.html

 ▼エディロール、2.1chスピーカーや光デジタル装備の
  パワードスピーカーなど
  インプレスAVウォッチ2002年10月9日
 http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20021009/edirol.htm
 ▼ローランド、光デジタル入力を備えたアンプ内蔵スピーカーなど
  インプレスAVウォッチ2002年4月24日  
 http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20010424/roland.htm

 ▼デジタルアンプ搭載マイクロCDシステム
  TEAC製品情報 (デジタルアンプの情報はよくわかりませんが)
 http://www.teac.co.jp/av/TEAC_AMP/crl600.html

 ▼ケンウッド、デジタルアンプ採用のポータブルMDプレーヤー
  インプレスAVウォッチ2002年9月5日  
 http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20020905/kenwood3.htm
 ▼シャープ、デジタルアンプ採用の「1ビットシアターシステム」第2弾
  インプレスAVウォッチ2002年9月2日  
 http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20020902/sharp2.htm

 今までは、デジタルオーディオといっても、アンプの以前でアナログ
 信号に変換しているわけですが、デジタルアンプ、デジタルスピーカ
 が採用されることによって、最終段階までデジタル信号のまま伝送さ
 れることになります(サンプリング周波数変換などの問題はさておき)。

 デジタルアンプでは、デジタル伝送の問題とアンプの電力効率の改善
 ができるため、古くから注目されている技術です。

 アナログパワーアンプのA級アンプ、B級アンプという呼称から、創生
 期にはS/N性能などが良くなかったこととデジタルをもじってD級アン
 プと呼ばれた経過がありますが(今でもD級アンプの呼称はし使用され
 ています)、現在は、PWM技術などの進歩によってHi-Fiオーディオと
 して利用できるに至っています。

 ASCII24の記事によると、先月9月2日のシャープの製品記者発表会で、
 シャープ専務取締役AVシステム事業本部長の濱野稔重氏は、

 「音の出るすべての機器に1bitデジタルアンプを搭載する」

 と発言されているようです。

 ▼シャープ、1bitデジタルアンプ搭載の
  ポータブルMDはじめ5製品を発表──チップの外販も
  ASCII24 2002年9月2日
  http://ascii24.com/news/i/hard/article/2002/09/02/
  638325-000.html

 シャープは、以前から1bitデジタルアンプをハイエンド機や外販チッ
 プなどて展開していましたが、いよいよ、コンシューマ製品に大々的
 に投入ということになるようですね(全てだそうです。シャープらし
 い発言ですね)。

………………………………………………………………………………………
■編集後記
 10/13日に、三重県の鈴鹿サーキットではF1(Formula One)の日本
 グランプリが今期の最終戦として行われました。

 例年はチャンピオン争いがもつれることが多く、最終戦になることが
 多い秋の日本グランプリは重要な一戦となるのですが、今年はシーズ
 ン半ばにして早々にドライバーズ・チャンピオンも、コンストラクタ
 ーズ・チャンピオンも、フェラーリの完全優勝が決し、焦点は、ドラ
 イバーズ3位争い、ホンダ、トヨタの日本チームの活躍、そして唯一
 の日本人ドライバー佐藤琢磨選手の走りに絞られた感じでした。

 今年の日本グランプリは、例年に無く気温も高かったせいか(いつも
 は、徹夜組に限らず防寒具は用意しますよね)、各チームとも、エン
 ジントラブルらしいアクシデントが多発し、まるでオーストラリアGP
 を見るかのようなサバイバルレースの中、最後は、ホンダ陣営唯一人
 となった佐藤琢磨選手は、見事5位入賞、初ポイント獲得という日本
 人ファンにとってドラマティックな最終戦となりました。

 かつて、故アイルトン・セナ選手は「音速の貴公子」というキャッチ
 フレーズを付けられていました(実際にはF1は音速ではないですが)。

 サーキットでは、目前を通過するフォーミュラーマシンのエンジン音
 は、「カクテルパーティー」の喧騒よりも遥かにうるさく、まさに、
 爆音を従えて走行しているように思えますから、「音速の貴公子」は
 良いキャッチフレーズだったのかもしれません。

 F1のエキゾースト音は、ファンにとって「この上無くイイ音」に聞こ
 え、ピットウォークの爆音は騒音ではなく、至福の音の洪水となりま
 す。本当は、消音マフラーを持たない6000回転のエンジン音は、
 興味の無い人にとって騒音以外の何物でもありませんから、人間が音
 を聞くときに、好き/嫌いという感覚が大きく作用していることを痛
 感する一瞬です。 
                      ARI A&S 編集部(Tom)

 URLクリッピングで、コンシューマのデジタルオーディオを取り上げ
 ましたが、プロ音響の分野ではデジタルスピーカや伝送経路のデジタ
 ル化がホットスポットになりつつあるようです。

 遊園地やサーキットなどのような大きな会場のPA、放送システムでは、
 アナログ伝送経路の損失と長距離アナログ伝送のための配線コストなど
 が改善でき、スピーカの制御面(オープン、ショートの検出やミュート
 など)をデジタル化しすることが可能なため、デジタルスピーカを推進
 しようという動きが地道に進められているようです。

 CobraNet(イーサーネットケーブルを利用した多チャンネル・オーデ
 ィオ)にYAMAHAが対応した製品を発売しましたし、IEEE1394ロング
 ディスタンスもありますし、プロ音響のオーディオネットワーク化と
 伝送経路のデジタル化は気になるところですね。

 それでは、次回11月7日Vol.17もよろしくお願いします。

                         ARI A&S 編集部





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