チェンバロにタンチョウヅルの羽根

アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ vol.47
音響と技術 メールマガジン
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音響技術とソフトウェア、ハードウェア開発

音響と開発 : Sound & Development
株式会社エーアールアイ / ARI
ARI CO.,LTD.
アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ

チェンバロにタンチョウヅルの羽根

47

メールマガジン「アメニティ サウンド 音と快適の空間へ」は、現在、休刊中です。 バックナンバーのコラムの内、サウンドコラムと技術開発コラムは、 サウンド、技術開発コラム に再編集、一部加筆修正して掲載していますので併せてご利用ください。

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■ アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ【Vol.47】2004年2月19日
□    チェンバロにタンチョウヅルの羽根
□    http://www.ari-web.com/
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□はじめての方へ、
このメールマガジンのご登録をいただきましてありがとうございます。
「アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ」は、隔週(第1、第3木曜日)
にお届けしています。内容を充実できるようにがんばりますので、末永く
お付き合いいただけますようお願い申し上げます。

 ■□■□■ CONTENTS Vol.47 □□□□□□□□□□□□□□□■□

  1.技術と開発の閑話(12)
    専門ドメインの基礎範囲(1)
  2.サウンド(45)
    チェンバロにタンチョウヅルの羽根
  3.3GPP音声通信(40)
    GSM音響規格 − 側音歪 第3次高調波含有率
  4.検索キーワード・マーケティング(URLクリッピング)

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 ■1.技術と開発の閑話(12) 専門ドメインの基礎範囲(1)
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 CNET Japanの森祐治さんの先月のブログに「統計ソフトよりも基礎
 分析力を習得しておこう」という題のコラムが掲載されていました。

  ▼「統計ソフトよりも基礎分析力を習得しておこう」
  CNET Japan Blog 森祐治・情報経済ブログ 2004年01月29日
  http://blog.japan.cnet.com/mori/archives/000973.html

 このコラムでは統計の分析と統計ソフトの利用についてが主旨になっ
 ていますが、このような問題は技術的な側面を持つドメインでの共通
 の状況といえるような気がします。

 コラムで述べられている問題は、統計分析を課題としている人(学生)
 が、分析内容を置き去りにして統計ソフトを利用して高度な手法によ
 る分析結果を得ていることが挙げられていますが、これは、例えば、
 ソフトウェアのライブラリの動作やアルゴリズムを正しく理解せず
 に、利用して高度な処理を実現しているプログラマというのも類似
 したことといえるかもしれません。

 アルゴリズムの理解やコンピュータの動作原理などを深く理解せずに
 利用して結果のみを得るという実装の設計に問題があるという意見は
 古くから存在するものですが、現在のソフトウェアに求められる処理
 内容が高度で規模が大きくなってきているため、その傾向はより強く
 なっているといえます。

 コラムでの主旨とは異なりますが、考え方を拡大すると「原理を理解
 して」設計することを求めるとすると、コンピュータのような高度で
 複合的な機器で動作するソフトウェアを設計する場合、いったいどこ
 まで理解している必要があるのかという問題に直面します。

 もちろん、専門に関わる全てを理解していれば、それに越したことは
 ありませんが、ソフトウェアの場合には、専門のドメインとは果たし
 てアプリケーションの分野を指すのか、実装コーディング技術を指す
 のか、もしくは、ソフトウェア工学的技術を指すのかと考えると、そ
 の全てということになり、大変広範囲な専門知識と総合技術を求めら
 れることになります。

 1例を挙げるならば、映像に関わるソフトウェアであれば、PCや
 OS、コーディングの知識は言うに及ばす、映像、音響、AV機器
 やメディア、サラウンド(ドルビー、DTS)やコーデックなどの規格や
 DRM、著作権問題とそれに伴う暗号化技術や法律問題などなど……
 将来性や一般教養的には、mpeg4(mpeg7も必要かも)や放送メディア
 などについても技術的、社会的な面について押さえているのが専門家
 ということになりますが……(際限がないかもしれません)

  ▼IT用語辞典 e-Words : DRM【デジタル著作権管理】
  http://e-words.jp/?w=DRM
  ▼MPEG-7 Japan Domestic Home Page
  http://www.itscj.ipsj.or.jp/mpeg7/ 

 やはり、分業化によって専門領域を分ける必要があることは
 明白です。

 先のコラムでは分析を問題にしなければいけない所、手段が目的と化
 して統計ソフトを利用することに振り回されているいう内容でした
 が、ソフトウェアの領域で同様の問題を考えた場合には、さらに多少
 複雑な問題を含んでいるかもしれません……

 長くなりましたので、次回に続けたいと思います。それでは、次回も
 よろしくお付き合いください。(^^)

  ▼ARIはアプリケーションソフトやデジタル機器の開発などを
   お手伝いしています。
  http://www.ari-web.com/develop/index.htm

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 ■2.サウンド(45) チェンバロにタンチョウヅルの羽根
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 このコラムは音や音響機器などについての話題をお届けしています。

 あまり目立たないニュースでしたが、今月、チェンバロ製作者の方
 が、特別天然記念物に指定されているタンチョウヅルの羽根を使い
 たいと申し込んで環境省に拒否されたというニュースがありました。

  ▼「チェンバロにタンチョウヅルの羽根
   難波修さんが構想 環境省、提供拒否 /岡山」
   Yahoo! News 地域 - 岡山ニュース 2月6日
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040206-00000001-mai-l33

 絶滅危惧種に指定されている鳥などの抜けた羽根でも譲渡には制限が
 されるというのは初めて知りました(当然ですね、動物によっては、
 オークションにされたり、高値で販売されたりということにもなりか
 ねないですし……扱いは規則どおりでないと問題がありそうです)。

 チェンバロ(ハープシコード)は、現在のピアノにつながる鍵盤楽器で
 す。ピアノは打弦方式ですが(ハンマーで弦を叩いて発音する)、チェ
 ンバロは撥弦方式です(弦を爪ではじいて発音するギターのような
 方法)。

 チェンバロには、鍵盤による音の強弱コントロールはなく、演奏者の
 表現する手段が限られる楽器でもあります。ピアノフォルテは鍵盤楽
 器に音の強弱(ピアノとフォルテ)をつけることがねらいで開発された
 ものです。

 鍵盤楽器に限らず同時期にいろいろな楽器の改良が行われています。
 音楽の授業などに出てくるクラシックの古典の時代です。

  ▼「久保田彰チェンバロ工房」に「チェンバロができるまで」
   という筐体の組み立て時の写真が掲載されています。
  http://www.bekkoame.ne.jp/~sakazaki/eki/kubota/

 丁度、ベートベンやモーツァルトの時代で、モーツァルトは、ピアノ
 曲を作曲していますが、初期のピアノフォルテでの演奏を前提として
 いるため61鍵盤の音域になっています。演奏方法でも、チェンバロと
 類似したトリル(連打)を持続音の代わりのように使っていることが多
 いのもピアノという楽器の進化と無縁ではないでしょう。

 直後の時代のベートベンは、76鍵盤、81鍵盤と後期になるにつれて音
 域が広がったピアノ曲が存在しています。これはピアノの音域が拡大
 されるのと同時に利用可能な鍵盤を最大限利用していることの現れと
 いえるでしょう。交響曲の3番のホルンといい、ベートベンは新しい
 楽器と斬新な利用方法を好んだ人のようです。

 現在のピアノは、スタインウェイ社のコンサート・グランドに代表さ
 れるように近代化によって、さらに大音量に、響きやハンマーアクシ
 ョンを改良したものです。鉄骨のフレームや弦の張り方など沢山の改
 良がほどこされているため、初期のピアノフォルテとは大分、音も、
 大きさも機構も異なっています。

 チェンバロの時代には、ダンパー(鍵盤と連動して弦を押さえて消音
 するための消音機構)にもペダルコントロールは最初はついていませ
 んし、当然ソステヌート・ペダルなどもありません。

  ▼野神俊哉:チェンバロ製作家
   「〜ダンパーペダルを使った世界最初の試み〜」
   というページでダンパーペダル付チェンバロも製作されている
   らしいことが判りました。
  http://sky.zero.ad.jp/jsd/jsd/d-works/Nogami/Nogami.html

 チェンバロに話を戻すと、撥弦部の爪にタンチョウヅルの羽根を使お
 うということのようですが……これはむずかしそうですね。ピアノの
 鍵盤の白鍵の象牙も難しくなったように従来の材料にこだわるのは難
 がありそうです。

 記事によると「環境問題やリサイクルに関心を持ち、視野を広げるこ
 とにつながると思う。」とおっしゃっているようですが、環境問題は
 ともかく、リサイクルに結びつけるのは……少し無理があるような気
 がします。工業用プラスチックなどで代替しても、楽器の「音」が守
 られていれば、伝統の楽器といっても良いのではないでしょうか。

 それでは、次回もよろしくお付き合いください。(^^)

 前回までの内容はバックナンバーをご覧ください。
  ▼バックナンバー目次
  http://www.ari-web.com/mm/bn/index.htm

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 ■3.3GPP音声通信(40) GSM音響規格 − 側音歪
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 (社)電気通信事業者協会(TCA)は、2004年1月末現在の携帯電話・
 PHS加入者数を発表しました。JEITAの統計情報は、TCAの発表を参
 考データにコメントなどが作成されています。

  ▼社団法人 電気通信事業者協会(TCA) 事業者別契約数
   (平成16年1月末現在)
http://www.tca.or.jp/japan/database/daisu/yymm/0401matu.html

 JEITAの12月度の出荷実績も発表されましたが、10ヶ月連続の400万
 台突破ということです。

  ▼「JEITA調査、2003年の携帯出荷台数は5,000万台超に」
   ケータイWATCH 2004/02/12
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/17579.html

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  ■14.Sidetone distortion (側音歪 第3次高調波含有率)
 ………………………………………………………………………□■□
 前回はGSM音響規格の周囲雑音側音測定でした。今回は側音歪 
 第3次含有率測定です。

  ▼前回までの内容はバックナンバーをご覧ください。
  http://www.ari-web.com/mm/

 側音歪 第3次高調波含有率測定とは側音における高調波成分の評
 価を行うための測定です。高調波とは基本周波数に対し、そのn倍
 の周波数の波形の事を指し3倍の周波数成分を第3高調波と呼びま
 す。例えば1kHzの第3高調波は3kHzとなります。高調波が基本波形
 を歪ませて音質等に影響を及ぼすため、高調波成分は抑制されてい
 る必要があり、GSM測定では第3高調波成分で評価する様に規定さ
 れています。

  ▼3GPP側音測定については以前にご紹介しました。
  http://www.ari-web.com/mm/bn/20021219.htm

 測定にはLRGP(テストヘッド)を使用します。

 試験信号には315Hz,500Hz,1000Hzの正弦波(Sine Wave)を使用し、
 各周波数での第3次高調波を測定します。試験信号は人工口より出力
 し、MRP点で-4.7dB(Pa)得られる様にレベルを調整します。

 人工耳に使用するカプラーはGSM規格では基本的にType1(密閉型)
 を使用、ターミナルの供給者が要求する場合はType3.2(ローリー
 ク型)を使用と規定されています。

 実際には周囲雑音の影響と漏洩のないType1(密閉型)を使用する
 のがより正確な側音レベルが測定できるので望ましいです

  ▼(御参考)3GPP側音測定接続例
http://www.ari-web.com/mobile/3g/mta01-wb/intro_04.htm#connect05

 第3次高調波含有率は、端末の受話器より出力される音声を人工耳
 にセットしたマイクロホン(ERP点)で測定し、基準信号のレベルと
 第3高調波のレベルより求めます。

 【第3高調波含有率の計算式】
  第3高調波含有率[%]= (第3高調波の電圧値/基準信号の電圧値)

 各周波数毎に計算により求めた側音レベルは、以下の範囲内で規格
 値が規定されています。
 
 ・Handset   第3高調波10%以下
 ・Headset   (規格書に記載なし)
 ・Handsfree  (規格書に記載なし)

 側音歪測定は3GPPには無い、GSM特有の測定です。側音は話者が端
 末で話す時のモニターの役割を果たしているのでひずみ成分も十分
 に十分に抑えられている必要があります。

 次回は送話方向 帯域外信号レベルについてお届します。

  ▼ARIは3GPP,GSM,PDC音響測定に対応した「3G携帯通信開発用
  音響測定システム MTA-01WB-S」を開発・販売しています。
  http://www.ari-web.com/mobile/3g/mta01-wbs/info-3gpp.htm

  ▼GSM端末音響システム 製品概要(MTA-01WB-S)
  http://www.ari-web.com/mobile/3g/mta01-wbs/info-gsm.htm

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 ■4.検索キーワード・マーケティング(URLクリッピング)
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 WEB参照可能な掲載記事などから毎日伝えられるニュースや記事から
 気になる情報や、翌日には埋もれてしまいそうな記事をピックアップ
 してご紹介しています(このメールマガジンの発行周期が隔週という
 こともあって新しい記事ばかりではありません)。

 ■人々の関心とキーワード
 インターネットの検索エンジンが普及したため、検索エンジンの検索
 キーワードで一般の人々の関心度を見るマーケティング的なニュース
 も時々見かけることがあります。

 1月は、BSE問題で吉野家(吉は下の線が長い文字が本当の字ですが
 表示できないので「吉」で…… )の牛丼販売停止に関連して検索
 エンジンのGoogleでのキーワードランキング1位は「吉野家」だった
 ようです。

  ▼Google、2004年1月の検索キーワードランキング首位は「吉野家」
   Internet Watch 2004/02/13
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/02/13/2084.html

 牛丼関連では各社軒並み同様の販売中止がアナウンスされていました
 が検索トップが「吉野家」というのはNo.1の認知度の強さを表してい
 ますね(牛丼やBSEなどではなく「吉野家」ウォッチが多かったという
 結果ですから)。

 米国では、先日、ジャネット・ジャクソンの露出事件でWEB検索や
 TiVOの検索などが過去最高の利用になったそうです(イラクよりも
 9.11よりも多いようです)。

 TiVOは米国で主流のTV録画予約システムです。ソニーのコクーンが
 搭載しているキーワードによる自動検索録画を行うシステムとしてご
 存知かもしれません。米国ではトップシェアHDDレコーダーの方式に
 なっているようです。

 TiVOは、検索のリクエストを送受信するため、ユーザーの関心や動向
 を知ることが可能です。プライバシーの問題があるためデータは利用
 しない契約にはなっているようですが、人気度を公表することは契約
 違反にはあたらないとの見解らしいです。

  ▼このページに2004年CESで展示されたTiVOが紹介されています。
   「2004 International CESレポート 【TiVo編】」
    〜 着実に機能を拡張し続ける「TiVo」 〜
    PCへのコンテンツ転送も可能にした「TiVo to Go」
   インプレス AV Watch
  http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040110/ces08.htm

 統計は現在の放送の視聴率調査とはこと異なり実数の実態がつかめる
 上、実際にリクエストされた番組を調べるだけでなく、キーワードも
 判明しているため、マーケティング利用などで注目されています。

 例えば、同じワールドカップ予選の番組録画をしているとして、視聴
 率調査だけでは「ジーコ」「サッカー」「ワールドカップ」または,
 特定選手に興味があって試聴しているのか、はたまた、たまたま見て
 いただけなのかは推測できませんが、TiVOの検索キーワードでは具体
 的にキーワードが判明しているため、マーケティング上の推測や仮定
 などにとってより有用な情報といえます。

 このため、その有用なデータを利用することで利益をあげるビジネス
 に結びつけるのではないかという見方もされています(否定していま
 すが)。

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 ■編集後記
 火星探索ミッションのマーズ。エクスプローションで使われている
 火星探査車『スピリット』の交信が不能に陥ってから数日後に復活
 し、ミッションを開始したというニュースが先月流れていました。

 HotWiredにNASAの技術者のインタビュー記事などが掲載されてい
 ましたが、「火星探査車を支えるOSとハードウェア」という記事が
 2/15に記事掲載されていました。

  ▼「火星探査車を支えるOSとハードウェア」
   WIRED NEWS 2004年2月15日
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20040218303.html

 火星探査車のOSはVxWORKSで交信不能状態は、リブートを繰り
 返している状態だったことや1日3回のチャンスでの遠隔リモート
 操作で状況を調べていたこと、フラッシュメモリを再フォーマット
 して動作復帰したことなど、なかなか興味深い内容です。

 このリモート・デバッグの話を見ると、何だか火星探査車が身近な
 存在に感じられます。

 それでは、次回、2004年3月4日Vol.48もよろしくお願いします。
                        ARI A&S 編集部

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