【Vol.23】2004年5月号
「ARI アメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。
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Monthly マンスリー
Amenity & Sound

アメニティ&サウンド 2004年5月

1.技術と開発コラム
 マルチコア・プロセッサ

2.音と音響の四方山
 防音と測定の話 -前編-

今回は統計のニュース関連と音響測定と防音の話題です。 音響のコラムは次回にも続きます。

編集後記  配信サービスと停止      2004年5月28日発行

1. 技術と開発のコラム マルチコア・プロセッサ

このコーナーはディジタル機器の開発や ソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で お届けできればと考えています。

Embedded Processor Forum 2004 という組込系プロセッサのフォーラムで ARMのマルチコアプロセッサが発表されました。 インターネットWatchの記事にレポートが掲載されています。

 ▼大原雄介のEmbedded Processor Forum 2004レポート
  組み込み用マルチコアプロセッサ「ARM MPCore」
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0521/epf02.htm

近年マルチコアや セル・アーキテクチャ など分散処理型のプロセッサ技術を耳にすることが多くなってきています。 ARMに限らず、組込系のプロセッサではマルチコアや コンフィギュアラブル・ロジック による分散処理などを指向したプロセッサの発表を見かけます。

コンフィギュアラブル

コンフィギュアラブル・プロセッサはハードウェアの回路を プログラマブルに可変できるようになっているプロセッサです。 最大の特徴は、プロセッサのハードウエアが可変であること (あたりまえ)ですが、 そのメリットは、目的によって ハードウェアをソフトウェアで変更して機能を利用できることです。 例えば回路の最大規模を利用したハードウェア演算をある時には、 画像処理にある時には、 音声信号処理にと使い分けるなどの応用が可能なことが コンフィギュアラブル・プロセッサの利点です。

当然、FPGAと同様、評価試作などの目的にも適しているといえます。

デメリットは可変にするため回路が必要となることや 誤動作などでハードウェアが変更されてしまうこと、 開発の難易度が高くなることなどでしょうか。 カスタム部分を持つプロセッサのソフトウェア開発は傾向的に、 汎用プロセッサのソフトウェアより開発ツールなどの点から 難易度が高くなる傾向にありますが、 コンフィギュアラブル・プロセッサは最も高い部類になるでしょう。 最も、組込み用途の場合、 ハードウェアのアーキテキチャはそれぞれユニークなので、 プロセッサにカスタム部分があることだけが大きな難点ということもない と思いますが……(ツールが正常に機能すれば)

ハーバード・アーキテキチャ
とマルチコア

プロセッサコア(核)複数内蔵したチップが マルチコアと呼ばれているものです。 複数のALU(算術演算回路)を持つものとマルチコアは かなり近い部分もありますし、 アーキテキチャによってはどちらとも呼べそうなものもありますが、 マルチコアと呼ばれる場合には 独立して動作するプロセッサが そのまま複数内蔵しているようなものを指します。

代表的なPentiumのようなPC用のCPUのように 並列演算可能なALUを複数搭載するハーバード・アーキテクチャの場合には、 一連の処理を並列処理によって高速化処理するものですが、 マルチコアの場合には 別々の処理を行っている複数のプロセッサが協調動作するような アーキテキチャです。

Pentiumのハイパースレッディングは、 並列演算に擬似的に複数の処理を行わせて同時実行していますが、 マルチコアでこのような並列動作をさせる場合には、 複数のCPUが別々に同時に処理をすることになります。 複数のCPUを搭載するマルチプロセッサのPCと類似した構造です。

マルチプロセッサとマルチコアの違いは、 1つのチップになっているかどうかという点が最たる部分ですが、 マルチコア・プロセッサの場合には 協調動作するためのシェアードメモリ(共有メモリ) などの仕組みが内部になるため、高速で小型にすることが可能です。 外部配線の場合には信号速度を高速にするのが難しかったり、 その配線スペースによって実装面積も広くなる傾向にあります。

マルチコアが一般に

近年、インテルのPC用のプロセッサの主流として来た方式は、 プロセス微細化による高速化によって、 スーパー・ハーバード・アーキテキチャに 超多段パイプラインによるクロック高速化だったわけですが、 消費電力との関係もあって、 今後マルチコア側を主流とすることに大きく転針するようです。

プロセス微細化

LSIを製造する微細加工の技術のことを単にプロセスと呼ばれます。 「90nプロセス」などとニュースに出てくるあれです。 より微細に加工することで内部の配線距離が短縮されることなど 高速化できる要素がありますが、 小さくなりすぎると無駄に電流が漏れるという現象が急激に大きくなり、 高速動作と合わせて漏れ電流の増加による消費電力増加が 無視できなくなります。

プロセス微細化による向上は限界に近いといわれています。 実際、インテルのロードマップも変化しましたし……

ロードマップの実現性などは判断できませんが、 Pentiumの後継CPUが軒並みマルチコアになるまで あまり時間が掛からないかもしれません。 身近なパソコンはマルチコアCPUが一般的ということになります。

組込プロセッサのマルチタスク

組込機器では、マルチタスクだったり タイムシェアリング、 マルチプロセッサであったりと実現方法は違うものの、 複数の異なる処理を同時に処理する必要がある、 もしくは、同時に処理するのが好ましい機能を求められることが 多々あります。

端的なところで考えれば、 ヒューマンインターフェースの部分と音声信号処理、 画像処理、機器制御を行う部分などは、 必要最低限のロジック結合ですみますから、 別のタスク処理のようにすることが一般的です。 通信機能なども珍しくありませんが、 これもまた、別のプロセスでしょう。

マルチタスクとイメージ

複数の論理的に分かれた処理コードを同時に (時分割して) 実行する方式をマルチタスク方式と言います。 マルチタスク(マルチスレッド)のコードを設計するのは 簡単なことなのですが、 UMLなどの図表だけで整理するのに難がある場合がありますから 設計者が動作イメージできることが重要です。

分散処理やマルチプロセッサ化もまた、 論理的な境界で分散させるわけではなく、 リソースの分配を主とする場合がありますから、 分散強調動作のイメージを想い描くことができることが重要でしょう。

このように、 複数のプロセスをマルチコアのプロセッサでは 別々のCPUとして動作させることも可能です( 優先の高い処理を複数で分散させることの方が多いかもしれませんが )

分散と集中

現在は、ネットワークを利用したり、 複数のサーバー、PCを利用するなどの分散化がトレンドです。 次のPlayStationはセル・アーキテクチャという 分散処理型のアーキテクチャが発表されており、 ネットワークを介して分散処理を行うようです( 具体的に何を分散処理するかは語られていませんが)。 分散と集中のトレンドはある程度定期的に入れ替わっている傾向が あるように思いますが、 現在はネットワーク分散によるメリットが大きいので 皆さん分散処理に向かっています。

発表されたARMの4マルチコアの製品は 2005年に発売の予定ということです。 そのころからマルチコア・プロセッサを搭載している機器が 身近でも珍しくなくなってくるかもしれません。


それでは、次回もよろしくお付き合いください。

ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発音響設計音響測定などをお手伝いしています。

2. 音と音響のコラム 防音と測定の話 -後編-

音と音響の四方山このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので 雑多な感じもありますがお付き合いいただければ幸いです。

ARIは音響機器や音響関連のご相談メールやお電話を いただくことがあります。防音は専門外ですが、お問合せを いただくこともあって前回は防音関係の話題を取り上げました。 今回も前回に続いて防音と測定の話題と続けます。

可変残響版

多目的ホールなどで可変残響版を設置した会場をご覧になられた方や、 可変残響版をご存知の方もいらっしゃるかと思います。 可変残響版は、壁面の板が開いたり閉じたり(角度を変える) してホールの残響を変えるものです。

多くの場合、 可変残響版の開口部分にあたる部分の内部には 吸音材や拡散反射を目的とした構造物があり 開口部で吸音するようになっています。 可変残響ホールは反射板による反射と開口部の吸音を変えることで 残響を可変しています。

残響補正

ついでまで…… PAを利用することを前提としている場合には、 スピーカや信号自体で残響音を変化させることも可能になります( 普通、付加することになりますが)。 高度な音場を目的とされる場合には、残響音を測定し、 残響音の周波数特性などを考慮して 電気的に残響補正がなされる場合もあります。

大きな会場の場合、 全ての聴衆ポイントを最適に補正するのは困難ですし、 補正する的確な残響音を付加するのも簡単ではありませんので 細かな残響補正を求めることも少ないですが、 コンサートなどでディレイやリバーブの音にEQで補正した残響を 会場に合わせて加えているのが残響補正です。

残響時間

さらについでに…… 耳をすませば、かなり長い残響にもなりえるのだが、 残響時間というのはどのような時間かという点について……

普通に残響時間といっている場合には RT60 という残響音が60dB減衰するまでの時間を指しています。

リバーブなどで時間を設定すると 設定時間よりも長い残響音が小さい音で出るのは 音が完全になくなるまでではないからです。

防音と遮音と吸音

防音と遮音と吸音について前回は少しだけ触れましたが、 遮音、吸音はいずれも防音対策などで用いられるものですが、 遮音は「音を遮る」、吸音は「音を吸収」することを指します (文字通りですが)。

この点は防音を理解する上で非常に大切で基本的な点です。

防音とは遮音と吸音の両方を用いて実現しています。 いただくお話の中には「吸音材を使って」というようなことが多いのですが、 防音対策の目的によって遮音、吸音は用い方が異なります。

遮音(音を遮る、反射する)

遮音は、文字通り内外の音を遮断することです。 遮断はしますが、必ずしも音が消えているとは限りません。 例えば、簡単に中空の2重壁でコンクリートウォールだったとします。 コンクリートのような硬い素材の壁は良く反響することを 経験からご存知だと思います。 良く反響するということは、 音のエネルギーロスが少なく反射されて 遮断されているということになります。

外部に音を漏らさないという点ではこれで良いわけですが、 内部は音は消えずに反響が大きいままです。

吸音(音を吸収する)

先の吸音材というのは、吸音、音を吸収する素材です。 ポピュラーなウレタンなどでできた多孔質吸音材などをご存知で「 吸音材」と仰るのだろうと思います。 多くの吸音材は空気の振動を熱に変換(摩擦熱) して音のエネルギーを消費させます。 そのため摩擦が大きいほど、 回数が多いほどエネルギー変換が起こり、 音が吸音されることになります。 空気振動と吸音材の摩擦回数とは音の周波数にあたりますから、 単純に言えば音の周波数が高いほど吸音され、 低い音はそれほどエネルギーをロスしないということになります。

低音が問題の場合に吸音材のみをいくら検討しても 的確な対策は困難です。

反射(反射で吸収する)

空気が壁にぶつかる時、 いくらかのエネルギーを消耗して反射されます。 ロスするエネルギー量は材質によって異なります。 ロスが少ないと反響が大きく長く残響が長くなり、 ロスが多いと早く音の振動がなくなり残響が短くなります。

先ほどの吸音材が三角形などの立体形状をしていることがあります。 また、音響関係の部屋では壁面などが凹凸が作られていたりします。 これは反射の方向を拡散させたり、 周り込ませて多く反射させることで、 エネルギーロスをコントロールする目的で作られています。

ANC

ここに該当しないものには ANC(アクティブ・ノイズ・キャンセラー) のような音を音で打ち消すという手法もあります。 一部の自動車や施設などで実用されている手法です。 ANCは簡単に言うと、 スピーカから逆相の音を出して相互に打ち消されるようにする 電気的な手法です。

2重壁は、遮断しきれず、振動が伝わってしまったものを 2枚の壁内部で反射する層を設けることで遮断するものです。 空気層で音が出る時点でロスし、内部の反射でもロスするため 壁外部にまで音が伝わりにくいようになっています。 さらに空気層には 吸音材が張られて内部で吸音するようになっている場合もあります。

大まかには、 このような考え方を組み合わせて防音するということになります。 手法やテクニックは色々ありますが、 振動(音)を遮断すること、 反射でロスさせること、 吸音材で熱変換することが主です。

防音工事など

家庭の防音などで工務店などに相談されると、 単純に吸音材などの施工を進められることがあるようですが、 基本は簡単な仕組みですから、 的確な提案として吸音材などで対策可能なのかを考えてみて 必要があれば防音の専門家にご相談されるのが良いですね。

それでは、次回もよろしくお付き合いください。(^^)

ARIはディジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発音響設計音響測定などをお手伝いしています。

編集後記

毎回、少しづつHTMLコードを変更しているのですが、 中々、お手元に届くコードと、 メールマガジンの配信各社のサイトのバックナンバー表示、 ARIのバックナンバーの全てで問題なく表示できるコードは難しいです (直接タグで装飾したらできますが)。

先月の場合は、 <TABLE>タグをかなり排除した状態にしたのですが、 配信サイトのバックナンバー表示は、 原型をとどめない無残なレイアウトになっていました。

また、以前に画像をアップロードするのを忘れたことがあります。 メールマガジンの場合にはホームページと違って、 直接、メーラーがダウンロードできるように 画像のURLに編集したものから変更しないと表示されないのですが、 これをミスったこともありました(スミマセン)

今回はというと、 あまり代わり映えしないのですが、 CSSコードを圧縮し、一番外側のテーブルを復活してみました。 「正しいHTML」を標榜される方などは、 表の目的以外に<TABLE>を使うなと言っているのですが、 今回の一番外側のテーブルがないと、 配信サイトのバックナンバーページでは レイアウトが保てないだろうと思い、 外枠決めのテーブルだけ復活しました。

もしかすると、 皆様のメーラーでご覧いただいているもので 正常に表示されていないことがあるかもしれませんが、 ご容赦ください。 また、 状況をお知らせいただければ、できるだけ善処させていただきます。

それでは、来月もよろしくお願い申し上げます。

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿 など歓迎いたしますので、なんでもお気軽にお寄せください。
※ご感想をお寄せいただきありがとうございます。 全ての方に返信できなくて申し訳ありません。 この場で御礼申し上げます。

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