【Vol.9】2003年3月号

「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

■□ CONTENSVOL.92003.3.28  □□□□□□■□■□■

1.技術・開発コラム

消費電力とプロセッサ

2.音と音響の四方山

地上波デジタル放送の音声

コラム 今回は適した図などが無かったので、 図は入っていません。スミマセン。

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技術・開発コラム  消費電力とプロセッサ

技術・開発コラム このコーナーは、 ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で お届けできればと考えています。

東京は気温も穏やかで春という感じになっていますが、 皆様のお住まいの地域はどうでしょうか。 東京電力が節電を呼びかけていた電力不足も、 なんとか、冬は乗り切れたとようです。...が、 夏の最需要期がやってくるまで、 それほど時間があるわけではありません。

低消費電力のCentrino

3月12日にIntelがCentrinoというブランドで (主に) 搭載されるモバイル用の低商品電力のプロセッサ 「Penitum M」 (モバイルPentium XXGHz-Mというのと紛らわしい名称ですね) を正式発表しました。 3月登場のノートパソコンにも いくつかのモデルに搭載されて人気を呼んでいます。

コラム キャッシュ

現在のCPUは、メモリバス性能より、 CPUの内部演算処理能力の方が高いので、 内蔵キャッシュメモリによって バス・クリティカルを解消しようとしています。

キャッシュメモリの量が多く効率よく利用できれば、 性能が向上します。

もっとも、 現在のパソコンのマルチタスクでは 非常に局所的にしかキャッシュメモリが 有効に機能していないかも知れませんが...

このCPUは1MBの大容量L2キャッシュを搭載し (PowerPCに2MBというのがあったと思いますが、 Intelのプロセッサとしては1MBは倍増状態です)、 低消費電力と、マイクロOpsフュージョン、アドバンスド分岐予測、 専用スタックといった、新技術が投入され、 ノートPC用の新世代として期待されていたプロセッサです。

いままでのモバイル用プロセッサは、 機能とクロックを低く押えることで 低消費電力版とされていた印象がありますが、 Pentium Mは、少し従来とは異なります。

今までのモバイル用プロセッサでは、 Speed Stepや低電圧化、低クロック化などによって、 既存のCPUを低商品電力化したものでしたが、 今回のPentium Mは、新規の技術によって、 同一クロックのモバイルPentium 4Mより かなり上回る実行性能を持つという 異例のモバイル版プロセッサです (そのためか高価でもあります)

ハイクロックのPentium 4

コラム ベンチマーク

コンピュータメーカーやプロセッサメーカーは、 CPUの性能を、 同一の条件で実行時間測定したSPECなどのベンチマーク値を 提示することが多いのですが、 アップルコンピュータは数少ない例外で、 ベンチマークテストなどの公称の性能指標を提示していません。

そのためもあって、 発表会などでの 「XX(アプリケーション)の実行速度が速い」 などの発言が そのままユーザーの指標となっていることが多いようです。

今回のAdobeのベンチマークは、 このような従来のアップル社の発言を覆すような結果に なっていることも話題になっている一因です。

さらに、最近は、アップル社のアプリケーションが アドビ社の商品と競合する商品が多くようですから、 アドビ社がアップル社に不利なベンチマーク結果を 公表していることが 恰好のゴシップネタになっているのだと思います。

インテルのプロセッサPentium4は、 基本的に、 マルチメディアアプリケーションなどの並列演算の高速化と、 パイプラインを多段化することで、 高クロック動作させることができるのが特徴のCPUです。

米国のAdobeのホームページ内に、 映像向けAdobe製品のベンチマークテスト、 Mac G4(1.25GHz Dualプロセッサ) とDELL( Pentium 4 3GHz) の比較が掲載されて一部で話題になっていますが、 この比較のようにいかにデュアルプロセッサといえども、 1.25GHz(×2でも2.5Ghz)対、 3.0GHzというクロック差では勝てません。 高速クロックの勝利というのが、Pentium 4の基本路線です。

高クロックで動作するため、当然ですが... 消費電力、発熱はかなりのもので、 一部で反環境型プロセッサと揶揄されるように、 消費電力という観点から見れば、 優れたプロセッサとは言えないのが現状かと思います。

Pentium M

Pentium Mは、興味深いCPUで、 いくつもの新規のCPU周辺技術は説明されていますが、 正式にCPUコアがどのような物かという 通常説明されることが発表されていません。

各所で言われているように、 Pentium 4コアと同じではないらしいことは、 モバイルPentium 4Mとの同一クロック時の ベンチマーク性能差を見ても信憑性を感じる 結果となっています。 Pentium IIIのコアではないかといわれていますが...

コードの最適化

個人的な感想として、 Pentium 4のコード最適化は、 コードとデータのメモリのワークキングサイズ、 キャッシュメモリの最適化を図るのが最大のポイントとなり、 コード自体の見た目の実行サイクルの差は それほどにではない傾向かと思います。 一方、Pentium IIIは、 コードの実行効率を向上するような最適化法が 有効なプロセッサだと感じていました (PentiumIIより差が出ないですが)

おおよそPentium IIIコアのプロセッサが少なくなって来て、 そろそろ、コードを最適化するにしても、 Pentium4向けの最適化方針を中心にしても良いかなと考えていましたが、 もし、Pentium MがPentiumIIIコアだとすると、 同様の傾向があるかもしれませんから、 Pentium 4に焦点を絞るのは問題です。

Intelのアナウンスでは、専用スタックと、 マイクロコードのペアリング変換部分(フュージョン)が パフォーマンス向上の理由ということですが、 Pentium IIIコアであれば、 Pentium 4 の弱点である分岐予測失敗などのペナルティが、 小さいことも理由の1つかもしれません。

消費電力

春のPentiumM搭載ノートでは 低消費電力に向けた製品は少なく、 軽量で高性能なモバイル・ノートという方向性でした。

マーケティングとして、低商品電力より、 性能を求められているという現れだと思いますが、 日本は、電力を得るために、 炭酸ガスを取るか、 放射能のリスクを取るかといわれるような状況ですから... デスクトップなどでも 真面目に消費電力は見直さなければいけない問題でしょうね。

それでは、次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発 などをお手伝いしています。

CONTENS
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音と音響の四方山  地上波デジタル放送の音声

音と音響の四方山 このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので、 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。

2003年はテレビ放送開始50周年ということで、 NHKなどで記念番組などが放送されています。 昨年は鳴り物入りでBSデジタル放送が開始され、 PDP、液晶テレビなどが家電の3種の神器といわれ好調かと思いきや、 BSデジタルの各放送局は、 今の所、期待した契約数には及ばず、 「各社横並びで苦戦」 などとやや揶揄気味に伝えられるような状態のようです。

そのような中、2003年末 (何日ではなく末のままですね) 地上波デジタル放送に向けて、 2月9日より地上波アナログ放送のアナアナ変換が開始されました。 アナアナ変換が完了した地域では、 既に該当UHF送波も停止し、 総務省の発表では進捗は順調とのことです。

地上波デジタル放送

コラム アナアナ変換

ご存知だと思いますが、 デジタル放送が利用する電波帯域と干渉が起こる アナログUHF放送の周波数(チャンネル) を変える、 デジタル放送開始前に干渉しないようにするための変更です。

2002年にアナアナ変換の見込み件数が修正され426万世帯、 1800億円(2000億円とも報道されています) に上るという大変な変換作業になっています。

この費用は、主に携帯通信事業者の収める電波利用料、 国費で賄われています。 (これも問題とされている1つのようですが...)

地上波デジタル放送は、 「国民不在のまま2011年7月24日のアナログ放送終了を可決した」 「アナログ放送終了を周知する努力が足らない」 (アナアナ変換すら認知が低いとも指摘されていましたが) などの批判的な声も少なくないような気がします。

本格的に開始されるまでは、 当面サイマルキャストでデジタルでも同じ放送がされるため、 「当面、ユーザーメリットが見えない」とか、 メリットとして取り上げられるハイビジョンも、 民放ではハイビジョンの番組はかなり少なくなりそうだ とトーンダウンしているという指摘もあるようです。

放送品質や、双方向化、そして、 電波帯域を空けることによる国民のメリットがあるため 国策として行なっているのだと思いますので、 迷走しているデジタル化の現状は うまく打開してもらいたいところです。

デジタル放送の音声

コラム サイマルキャスト

放送方式の移行期間のために、 アナログ放送とデジタル放送で同じ内容を放送することです。

映像などに比較すると地味なため、 通り一変しか触れられていないことが多い音声ですが、 マルチチャンネル化や高音質化というメリットがあります。 映像のハイビジョン化が制作の問題を持つように、 音声もやはり、 制作サイドでは色々と検討される課題があるのではないかと思います。

コラム デジタル放送HP

地上波デジタル放送のページに「目的」や「利点」 などの説明が掲載されています。

総務省の関東総合総合通信局のページには、 「地上デジタルテレビ放送みんなの家ではじまるよ」 というページが設けられています。 (大きめのイラスト画像中心の表示と、 文字が流れたりしていますので、 一部の方は不興を誘うかも知れません。 お嫌いな方はやめておいてください。)

当面、 音声は音楽番組や元々多チャンネルで制作されている映画、 スタジアムなどでのスポーツ放送などでは 積極的に高品位やマルチチャンネルも利用されるのだろうと 想像できます。

通常の番組では、 アナログ放送とデジタル放送のサイマルキャストのため、 共通コンテンツ化を考えると アナログとほぼ同様の放送ということになるのでしょう (デジタルのみ帯域が広いHi-Fi音声 ということはあると思いますが、 特別な差はない)

サイマルキャストを考える時、 アナログ−デジタルを同様の内容と考えるか、 デジタル放送の音声チャンネルを積極的に生かす と考えるのかは番組によっても、 放送局の考え方によっても差が生じるかと思います。

デジタル放送のCM

放送局に差があると非常に都合が悪いのがCMです。

CMは、各局共通の品質の放送ができるシステムが望まれますので、 アナログ放送同様、デジタル放送に対応した時でも、 マスター入稿は統一されるのだと思います。

デジタルとアナログの場合、 現在のステレオ/モノラルより、 マルチチャンネルなどの差がありますので、 音声のマスターを別にするということもあるかもしれませんが、 デジタルのマルチチャンネルソースを ステレオ化してアナログ音声ということになるのでしょうか。

アナログ放送では、本放送がモノラルでも、 CMになった途端、音量が上がってステレオになるように、 デジタル放送では、CMになるとハイビジョン、サラウンド放送になり、 本編に戻るとモノラル音声の周波数変換映像に戻る という劇的な切り替わり方になるかもしれません。

サイマルキャスト放送では、 「多くのコンテンツが共通なのだから、 制作費や放送の負担はそれほどではないはず」 という記事がありましたが、コンテンツのためではなく、 CMのためにハイビジョン、マルチチャンネルの対応と、 アナログ対応のための2本化、 それを運用できるシステムが 必用になるのではないかという気もします。

付記

地上波デジタル放送関係で色々と指摘されている課題を上げてみます。

アナアナ変換

 件数が多く、スケジュールなどが疑問視されています。
 また、見込みが違い、件数と金額が大幅に増加した点もあります。

アナログ放送終了の告知が不足

  家電量販店の店頭などでも告知すべきという意見があります。
 BSデジタルの初期トラブルのように、 知らずに購入したため受信できない
 場合や、正常に対応できない機器が発生する懸念もあります。

アナログ終了が延期になると予測

 協議を重ねた結果、BSアナログハイビジョンは、 2007年のBS衛星切替
 ではなく、2011年まで終了時期が延長されたように、 地上波デジタルも
 当初予定より延期されるという予測

UHFは直進性が強く モバイルに適さない

 中継を増設しないとビル陰などで電波を受信利用しにくい

ケーブルテレビのデジタル対応

 都市部では、アンテナ受信よりケーブルTVの比率が高く、 ケーブルTVの
 デジタル化対応の件数が多い。

携帯用セグメントのデータ

 管理団体MPEG-LAがMPEG4配信コンテンツに使用料を課金すると
 主張しているため、 携帯用チャンネルでのストリーミング方式決定に難

電波、通信、放送の法制が1本化

 電波法、放送法、電気通信法に分かれているため、放送事業者に
 適用される法律が各種の問題を生じている

国策として行なわれていますし、 デジタル化を将来に渡ってやらないという方針転換も 考えにくいですから、課題はあるかもしれませんが、 できるだけ円滑にデジタル化が進められると良いですね。

それでは次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、 音響設計 音響測定、 音響調整など 音響関連サービス の業務や、 デジタル機器の開発 プロ用音響機器 の販売を行なっています。
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■□ 編集後記 □■

イラク関係の報道があふれています。

戦時下で事実関係の裏を取って報道できないので、 本当は、見出しには、 「?」とかつけないといけないということはないでしょうか?

スポーツ新聞も噂や憶測を見出しにするときに、 最後に「?」つけてます。

「ピンポイント攻撃成功...か?(米国発表)」という方式であれば、 ギリギリセーフだというのが スポーツ新聞などでのゴシップ報道のルールですよね。 断言してはいけないと考えられているのですよね。 「?」はつけておかないと...

発表された内容を判りやすく、 戦車の模型を置いて見せた時には... 本当にそこに戦車がいるとは限らないですから... 「これは米国の発表によるものです」というテロップが必用ですね。

後から作戦遂行のための発表だったと言われると、 また、プロパガンダ報道をしてしまったと自戒することになります。 「幸い犠牲者は小数だ」などと報道していて、 万一、大量に犠牲者がいたと後で判明したら、 またしても、プロパガンダ大貢献です。

それでは、次回、2003年4月号もよろしくお願いいたします。

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿など歓迎いたしますので、 なんでもお気軽にお寄せください。
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