【Vol.6】 2002年12月号
「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

■□ CONTENSVOL.62002.12.27 □□□□□□□■□■□■
1.技術・開発コラム
  参考書籍や技術書
2.音と音響の四方山
  CD / Symphony No.9
   編集後記
 配信サービスと配信停止

コラム 今回は、年末なので第九ということにしてしまいました。


1 技術・開発コラム  ■参考書籍や技術書
技術・開発コラム
このコーナーは、 ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で、 お届けできればと考えています。

ARIのホームページの書籍コーナーでも一般に流通している工学書などを一部ご紹介、掲載しているのですが(書籍の更新が滞っていてスミマセン)、書籍をピックアップしてみると、その多さと、同時に、少し古い(10年程度)書籍の多くが廃刊、もしくは、市場では流通していないことに少々ショックを受けます。

コラム 取次
コンピュータ関連の書籍は入手しやすいのですが、工学書でも、コンピュータ以外の分野については、アマゾンや楽天ブックス、esブックス、J-Bookなどのネットワーク書籍販売大手でも、取扱いの種類が少ない傾向にあり、版元では入手できても、日版や東販などの取次で扱われなくなった書籍は入手困難になります。
(一般書店でも、取次が扱わない書籍を取り寄せるのは難しい場合があります)

アマゾンなどオンライン書店などで、「取扱いできない」や「在庫なし」であっても、版元には十分在庫が存在するケースもあり、まだまだ、オンライン系も改善すべき点が多いように感じます。

まだ、取次と個別の出版社のオンライン直販が可能になっただけで、データベースが連動するわけでもなく、従来の流通に乗らない書籍は、オンラインでも流通していない状態のようです。

ARIの書籍コーナーは主に、取次大手の日販のシステムで流通している書籍です。
技術書に限らず、一般の書籍も、販売されつづける一部の人気の高い商品でなければ、たった数年前の書籍が、もはや入手が困難な書籍が圧倒的に多く、良書であっても、出版元に在庫があって、直販、もしくは、取り寄せ可能でなければ、取次ぎでは扱われていない書籍が多数存在します。

廃刊
ARIの書籍コーナーの音響工学などのページの書籍が考えられるより圧倒的に少ないのは、実は、取次経由ではもはや市場で流通していない書籍の方が多いことが1つの理由です(もう1つの理由は、ピックアップしきれていないためです。スミマセン)

知っている書籍名や、キーワード、著者などで書籍検索をすると、「廃刊のためご購入になれません。」や、在庫がないため購入できないという書籍が非常に多いです。

日本の場合には、海外と比較すると、再販制度などの関係からか、小さな出版社が非常多く、限られた分野や小数部数の書籍を出版している出版社が結構多いのだそうですが、ホームページを持っていなかったり、直販はしていないなど通信販売で入手しようとしても、入手が難しい場合があります。

つい最近、書籍を検索する機会があったのですが、ISBN番号もデーターベース化もされていても、廃刊になっていて流通はしていない書籍が数十冊見つかるだけで市場で流通している書籍は1冊もないという状況が沢山ありました。

富士通の故池田氏の書籍を検索した時も(それほど新しいということはないでしょうから、ある程度は止むを得ないのですが)全滅状態でした(これは版元でも絶版なのですが)。シ−モア・クレイについて書かれた書籍は1998年に出版されていてまだ比較的新しいので入手可能だったのですが、富士通の池田氏の書籍はなく非常に残念に思いました。

人文書などに比較すると、技術書は、古い技術となるために価値が低くなる書籍の比率は高くなるかもしれませんが、基礎技術などでは、全く、価値が変化しない場合も多くあります。

オンデマンド印刷やオンライン図書館
コンピュータに関連した書籍でもこうですから、ましてや、音響工学などでは絶版の嵐です。古くなったために価値がないということが考えられない書籍が全く市場では流通していない現状は、オンデマンド出版やオンライン図書館など、現状の市場流通の問題を解決できる可能性がある方法で解決されないかと強く感じています。

コンピュータ創生期の勇、池田氏のことが記載された書籍で流通しているのがプロジェクトXのみというのは...最近良く言われる「技術立国日本」などという形容をするならば残念で済ますべきではないと感じています。

ARI PR ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発 などをお手伝いしています。



2 音と音響の四方山  ■CD / Symphony No.9

音と音響の四方山

このコーナーは、 音や音響についてのコラムをお届けします。

Symphny No.9
年末です。今年最後のマンスリーになりました。以前にテキスト版のメールマガジンではCDの長時間収録と音質に関連したコラムで、カラヤンが第九が連続再生収録できる時間74分にと意見して現在のCD収録時間が決められたということに触れたことがあります。

年末ですので、ご存知のように、日本列島第九シンドロームという現象が見られるベートーベンの第九(交響曲第九番 合唱付)に関連したコラムにしてみました(「音響」とは違いますが、大目にみてください)

ベートーベンの第九のコンサートパンフレットなどの紹介やCDの紹介では「1824年初演で大喝采を受けて...」というくだりが多いのですが、実際は、初演は確かに大喝采であっても、再演は客入りが悪い不成功に終っています。没後、ワーグナーがオーケストレーションを修正したバージョンでコンサートを成功させるまで、演奏家や聴衆に受けの悪かったどちらかというと失敗ぎみの曲です。

コラム 副題
クラッシック音楽の交響曲には、ベートベンの3番「英雄」のように副題(愛称)がついているものがあります。
5番「運命」が日本だけの愛称であることは有名ですが、9番の「合唱付き」は、「付き」だろうかと疑問に思うことがあります。

第九は、他の8曲と異なり、第4楽章の「合唱」パートが主役の構成方法になっていますから、おまけのように「付き」ではなく、「合唱」ありきのような感じだと思います。もっとも、ベートベンも後に器楽曲として完成した形式にするつもりだったらしいですし、多分に声楽パートが器楽的な扱いをされているような曲ではありますが...おそらく、器楽曲にした場合は、かなり異なった第4楽章になったのではないかと思いますので、今の第九であれば「付き」ではないように思います。

副題といえば、一般にCDやコンサートの人気の曲は、副題が付いている曲に人気が集中するそうです。
ベートーベンで言えば「英雄」や「運命」「田園」、モーツアルトなら「ジュピター」などですね。

ベートーベンの5番、6番が傑作であることは間違いありませんが「運命」のような原典とは無関係な愛称がありなら、8番や、モーツアルトの40番などの名曲にも、何か愛称をつけておけば良いのではないかと考えるときがあります。
著名な音楽家の方に「8番は当時のベートベンの完成形の1つ...」のようなコメントをもらって「完成」と愛称を付けると、きっと、「完成」は1度は聞かなきゃいかんだろうということになるのではないでしょうか(^^)

今でこそ色々な奏者の方の演奏したい曲の候補に入るでしょうが、当時は、前衛的な色あいが強い第九は受けが悪かったようです。

初演の拍手喝采は、十年振りのベートーベンの交響曲、指揮に対する尊敬と賛辞によるものなのでしょう(第2楽章にして、拍手によって演奏が中断という現象もそのためではないでしょうか。第1楽章はすばらしいと思いますが、聴衆はベートーベンのそれまでの全編に渡って主題によって統一される作風を知っているはずですから、演奏を中断するほどの喝采が第1楽章終了時に起こるのは不自然な気がします)。

1楽章冒頭のメジャーかマイナーかがはっきりしない導入や、ティンパニの連打による持続音的も、第2楽章冒頭のアプローチも前衛的といえますし、言うまでもなく第4楽章の合唱も交響曲としてはフォーマット破りです(交響曲の形式を確率させたのは、モーツアルトや当のベートベンによるところが大きいですが)

長時間演奏
演奏時間も1時間を超える大作です。ベートベンの交響曲の中では比較的長時間なのは9番と3番「英雄」ですが、3番は、50〜60分という所ですから、9番の70分以上というのは非常に長い演奏時間です。

もし、ベートベンが第九を8番までの単純な延長線上で作曲されていれば、合唱もなく、器楽曲による完成度の高いソナタ形式の交響曲を目指したのではないかという気がします(合唱は元々10番になる予定でしたし)

他とは全く違う性質
書籍などで多くの専門家の方が言われているように、5、6番(運命、田園)の主題モチーフを全編に展開するという技術や、7、8番でのさらに交響曲としての完成度を極め、ピアノソナタなどベートーベンの集大成というべき高度な作曲技術や、8番までのモチーフが随所、各パートに巧みに展開されて昇華、全編が統合される方式から一転して、主題に向かって収束していくという手法や、比較的ストレートに各楽章のモチーフをぶつける手法は、他の8曲とは全く異なる性質なのだと思います。

第九は、ワーグナーやブルックナー、ブラームス、マーラーなどの作曲家に多大な影響を与えた上、現代の音楽や映像メディアを好んだカラヤンを通して、CDという現代のメディア規格にまで影響を与えました。

もし、単純に8番につづく9番、であれば、ベートーベンの集大成的、代表曲ではあってもここまで特別な曲にはならなかったのではないかと感じますし、60分の収録時間内に収録される演奏時間だったのではないかとも思います。

そして、CDの収録時間も当初の60分になり、長野オリンピックの世界合唱中継も、日本の年末恒例イベントもなかったのでしょうね。

それでは、次回(来年)もよろしくお付き合いください (^^)

参考: 日本PA技術者協議会
日本PA技術者協議会 JPA(Japan Public Address Technologist Association)のホームページの機関誌<PAジャーナル>の紹介中に
『PAジャーナル』の記事例(座談会「長野オリンピック」音響を担当して)
という記事が公開されています。

この記事では、長野オリンピックのPAに関連して、4. 「第九交響曲」合唱団の音響というページでは、小沢征爾さん指揮で世界中継が行なわれた第九の放送や会場のディレイいついての記事を参照することができます。

ARI PR ARIは、 音響設計 音響測定、 音響調整など 音響関連サービス の業務や、 デジタル機器の開発 プロ用音響機器 の販売を行なっています。


■□ 編集後記 □■

本年は御愛顧をいただき、ありがとうございました。来年度も皆様にご覧いただけるますよう努力する所存です。来年もご支援よろしくお願い申し上げます。

皆様がよいお年をお迎えになられますことを

それでは、次回、 2003年 1月号もよろしくお願いいたします。(^^)

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿など歓迎いたしますので、 なんでもお気軽にお寄せください。


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